顎関節症とは?
皆様は「顎関節症」という言葉を聞いたことがありますか?
最近では女性誌とか新聞等で取り上げられることも多くなっていますがいったいどんな病気でしょうか?
先日、中学2年生の女の子が「口を開ける際に顎が痛い」と来院されました。また、別の日に高校3年生の男子が「急に口が大きく開かなくなった」と来院されました。
診断の結果は双方とも「顎関節症」でした。
どんな症状があるのか?
顎関節症の3大症状は「口を開けるときに顎の回りが痛い」「口が大きく開けられない」「顎がカクカク音がする」です。
各々についてもう少し詳しく説明しましょう。
(1)顎の回りが口を開けるときに痛い(顎関節疼痛)
顎関節症の症状の中で最も代表的かつ困る症状の1つがこの「顎の痛み」です。
多くの場合、口を開けるときに顎の関節の周辺に痛みが出やすいです。時には、こめかみ・肩・首筋の筋肉に圧痛をおぼえることもあります。
痛みが出やすいときは「大きく口を開けるとき」「固い物をかむ時」「朝起きて最初に口を開けるとき」が多いです。
(2)口が大きく開けられない(開口障害)
通常であれば人間の顎は大きく口を開けると自分の指が3本分は横にして入ります。顎関節症の症状が進むとこのように大きく口を開けることができなくなります。
にぎり寿司位の大きさの物が口に入らなくなると日常生活に不都合を感じます。朝起きたときから全く顎があかなくなった方もいらっしゃいました。
開口障害の原因は大きく口を開けると痛みを生じるために開けられない場合と、顎の関節内の異常である程度以上開けられない場合があります。
(3)顎がカクカクと音がする(関節雑音)
口をある程度以上開ける時に「カクッ」と音がして、また閉じる時も小さく「カクッ」と音がするとがあります。
これが関節雑音です。この「カクッ」という音以外に「ジャリジャリ」「カックン」「ゴリゴリ」と音を感じる時もあります。
この関節雑音に関しては3?4人に1人の人に大なり小なりあるという研究データもありまして、(1)(2)の痛みとか開口障害を伴わない場合は心配しないでいいことも多いですが、音がだんだんと大きくなってきているときや、痛みや開口障害を徐々に伴うようになるときは注意が必要です。
歯科での診療は?
歯科ではこの顎関節症に対してどのような治療をするのでしょうか?まずは診断です。
今の症状が始まった時期、症状の強弱、変化などの問診を行います。次に触診です。顎の関節部分を触診して、顎の開口時閉口時、関節が十分に動いているか、また、筋肉に圧痛等ないか調べます。次にレントゲン撮影です。パノラマレントゲンの顎関節モードで関節の形などに異常がないか調べます。
また、必要に応じて大学病院などで顎関節MRI検査を行うこともあります。この診断結果リウマチの様に早急な治療が必要なケースがあります。また、一定期間様子を見て治療を行わないケースもあります。治療が必要な場合、どのような治療を行うのでしょうか?
(1)開口練習
ひどい痛みなどの急性症状が強くない時は、まず開口練習を行います。できれば入浴時または、入浴後の体があたたまってリラックスしている時に、自分で大きく口を開けた時より、3?5mm程度、自分の指を使って力を入れて大きく口を開ける練習をします。ほんの少し痛みを感じる程度が目安です。これを1日1回50回行います。
(2)スプリント療法
スプリントはボクシングなどのマウスピースに似ていますが、歯の形を取って、その人に応じた歯のマウスガード(スプリント)を作製します。これは咬合安定用のスプリント(スタビライゼーション・スプリント)と関節円板整位用のスプリント(リポジショニング・スプリント)等があります。咬合安定用のスプリントは夜間、就寝時などに装着してもらって顎の関節や筋肉の負担を軽くするのが目的です。
食いしばり防止の効果もあります。
関節円板整位用のスプリントは顎の関節の中でずれてしまった関節円板(クッション)を元にもどすために使用します。
どちらのタイプにしても、使用する時間、使用方法は歯科医師の指示に従うことが大切です。
(3)関節円板整位術
長期間、カクカク音がしていたのに急に音がしなくなったと思って喜んでいたら急に口が開かなくなったという方が時々います。これは関節円盤が前方にずれたまま元に戻らなくなってしまっているためのことが多いです。
症状が出て1週間以内であれば歯科医師がこの円盤を元に戻す従手整腹を行うことがあります。
(4)咬合治療
最近ではこの咬合治療を余り行わなくなってはいますが、スプリント療法や関節円板整位術によって、咬み合わせがかなり「ずれ」て安定してしまう場合、この「ずれ」を修正するために歯の上に金属やセラミックをはりつけて咬合を再構成する事があります。
(5)自己管理・家庭療法
顎関節症の治療でこの自己管理・家庭療法は非常に大切です。
まず適度に体を動かしてもらうこと、例えば体操や散歩など1日に1回は必ず行ってもらいます。
これだけで症状が改善する方もいらっしゃいます。
他に、痛みが激しい急性期の冷湿布、冷たいタオルなどで患部を冷やす方法、また、急性期を過ぎた後での温湿布、蒸しタオルなどで患部を暖める方法もあります。
また、食いしばりを意識的にやめてもらったり、姿勢などを注意して変えてもらうこともあります。
治療期間、費用は?
問診、診断、治療計画の説明等で週に1回の通院を3?4回してもらうことが多いです。
その後、スプリント療法が必要な方は2週間もしくは1ヶ月に1回程度の通院となります。
2?3ヶ月で治癒する方が多いのですが、ほとんどの方が長くても6ヶ月以内で終了します。
費用は当院ではほとんど全ての治療が健康保険の範囲内で可能です。
スプリント作成で、タイプ、負担率(2割3割)で違いますが約3000円?6000円の負担となります。
顎関節症はこわくない
顎関節症のことを大変心配していたり、非常に悩んでいる方が多いですが
(1)顎関節症の症状は比較的多くの人に見られること
(2)セルフリミッティング(自然に治る可能性がある)であること
(3)治療も比較的簡単な方法で治ることが多いこと
より、ほとんどの顎関節症が決してこわい病気ではないことが理解してもらえると思います。
症状がひどくなってしまって一般の開業医での対応が困難になった場合は大学病院の専門の顎関節症口腔顔面痛み外来と連携を取って治療を受けてもらうことが可能です。
決して必要以上に悩まないで私達歯科医師に何でも相談してください。きっとお役に立てると思います。
岡山大学歯学部付属病院からのお知らせ?顎関節症・口腔顔面痛み外来
<顎関節症とは?>
顎関節症は'あご'の関節や筋肉の病気で、口を動かしたときに'あご'が痛い、音がする、口が開きづらいなどの症状が出ます。また、口や顔には原因のよくわからない慢性的な痛みが出ることがあります。このような顎関節症や口腔顔面の慢性痛をもつ患者様に対しては町の歯医者さんではなく、専門医が治療にあたる必要のある場合が少なくありません。
そこで岡山大学歯学部付属病院では関係する各診療科から専門医を集結し、集学的なチームアプローチにより、顎関節症の患者様や口腔顔面に慢性痛をもつ患者様の診断・治療を行います。
<治療内容>
治療法には、薬物療法(消炎鎮痛剤、抗不安薬、抗うつ剤、漢方薬などの投与)、スプリント療法(上下の歯の間にマウスピースのようなものを夜間装着する)、咬合治療(噛み合わせの異常を修正)、理学療法(顎体操、開口訓練、温熱療法、マッサージなど)、神経ブロック、外科治療(顎関節注射療法、顎関節洗浄療法、顎関節鏡視下手術、形成手術など)があります。多くの場合、どれか単独ではなくいくつかを組み合わせて治療を行いますが、患者様の90%以上において外科治療を行うことなく保存療法により良好な治療結果が得られます。保存療法の効果がない患者様については、必要に応じて外科治療を行います。
<受診するには>
基本的には、各曜日午前中、予診室にお問い合わせいただければ、その日に簡単な検査(問診、診査、X線検査など)行い、精密検査や応急処置が必要かどうか判定します。精密検査が必要と思われた場合には、歯科放射線科や担当専門家で予約を取り、改めて来院頂きます。本院にかかられておられる患者様の場合には直接診療日に予約を取ることが可能です。もちろん他の治療が必要な場合には他科へ随時紹介差し上げます。多くの患者様の場合には、関連他科や地域の開業歯科医院等に併行して受診していただきます。
<お問い合わせ先>
岡山大学歯学部付属病院 第1補綴科 矢谷博文(086-235-6680)(教授室)
歯科医療に関するいろいろなお話を書いていきます。
患者様がお住まいの主なエリア
岡山県岡山市 ・岡山県倉敷市 ・岡山県総社市 ・岡山県玉野市 ・岡山県御津郡 ・岡山県吉備中央町 ・岡山県瀬戸町 ・岡山県早島町
上記以外の地域からも沢山の患者様が来院されています。お気軽にお越しください。












